尿意は全く感じていないにもかかわらず、咳やくしゃみ、重いものを持ち上げる、スポーツをするなど、おなかにちょっとでも圧力(腹圧)がかかると、尿がもれ出てしまう状態を「腹圧性尿失禁」といいます。進行すると早足で歩いたり、階段の上り下りでも症状が現れてきます。
出産経験のある女性、肥満気味の人に多くみられ、40歳代の女性のおよそ15~30%、お産経験者の30~50%が、この症状に悩まされている(あるいは悩んでいた)とされていますが、なかなか打ち明けにくい性質のため、実際はもっと多いでしょう。
女性の場合、骨盤内には、膀胱や尿道、子宮、直腸などの臓器があり、骨盤の底の部分には、「骨盤底筋」と呼ばれる筋肉や、靭帯などの組織があります。これらがハンモックのように、骨盤内の臓器をしっかりと支えています。
尿道もこの骨盤底によって支えられることで、腹圧がかかっても尿が漏れないようになっているのですが、妊娠・出産はこの骨盤底に大きな負担をかけてしまうのです。
妊娠中は、胎児の重みで骨盤底が緩んで下に伸びきった状態となり、尿漏れが起こりやすい状態になりますが、通常は産後1年以内に治ります。ところが、1年以上たっても症状に改善がみられない場合は、出産で骨盤底にある筋肉や靭帯が傷ついたため、腹圧性尿失禁になったと考えられます。
2回以上の出産経験がある人、出産前にも尿漏れを経験した人、親族にも同じ症状の人がいる人などは、現在は何もなくても将来尿漏れが起こる可能性があるので注意が必要です。
また、加齢によって生じる骨盤底筋の緩みや、便秘で必要以上に「いきむ」ため骨盤底に負担がかかってしまう、肥満で尿道を閉めるバルブの役割を果たす「尿道括約筋」が弱くなってしまうなども、腹圧性尿失禁の原因となります。